音楽をテーマにした6月16日木曜日『Last Thursday』での『原宿ロックナイト』(会場:SMOKE)では流石としか言いようがない卓越したDJプレイで来場者を楽しませてくれた大貫憲章氏。 前回に引き続き、『Big Wednesday』でもSMOKEでのDJが決定。 自らも人気ロックDJイベント『LONDON NITE』*を主催する大貫氏が感じたTokyo design Flow。そして今、遊び、社会、若者に想うこと。
*LONDON NITE…1980年、日本初のロックDJイベントとして新宿のディスコ「ツバキハウス」でスタート、現在も新宿のCLUB WIREで継続中。関連CD「LONDON NITE」シリーズ(イーストウエストジャパン始めBLITZ-PIA,ソニーから計8枚)と20周年イベントの模様を収録したビデオ「LONDONNITE ZEPP 2000」(V2),さらには’05年には25周年記念となるDVD「LONDON NITE ‘02&’03」(SPACESHOWER)も発売。
—Tokyo Design flow(以下、TDF)の話を聞いて。
「今、大人も子供も遊ぶ場所ってカラオケや飲み屋ぐらいじゃないですか。遊び心を持ってゆるく遊べるところがないんです。もっと長期的な展望に立って、種まいて、苗木を育てるようなかたちで遊び場を作っていくことが必要なんで。このイベントがその一つのきっかけになればいいなって思いました」
—大貫さんの考える遊び場。
「例えば、クラブでいうと日本のクラブは常にフロアが盛り上がってないとだめっていう強迫観念みたいなものがあります。僕が海外で体験してきたクラブは、一種のサロンなんです。踊ってる人、飲んでる人、単純に会話を楽しみに来ている人といろいろいます。集まった人が何かをやらされてるんじゃなくて、自ら楽しみを見つけて柔軟に遊んでいる場所だったんです。ぼくが28年間毎週やっているロンドンナイトもみんなに我が家のように思ってもらって、パンク好きな人だけじゃなくいろんな人が "遊び" に来てくれる場所でありたいと思っています」
—TDFに求める空気。
「やっぱり、やんちゃをやるかんじが欲しいです。それは腕力じゃなくて、人間の頭の柔軟さのやんちゃです。常識とか物事の規範ばかりにとらわれてない、好奇心のある若者や大人にいっぱい集まってもらいたいなと思っています。年齢も性別も職業も関係なく集まれるような場所で、そこからみんなが何かを持って帰ってもいいし、持ち寄ってもいいという裾野の広いパーティーにしたいです。お客さんも受け身じゃなくて、コミュニケーションを自ら取るような雰囲気で、風通しがいいのが一番いいですね」
—若者や社会に想うこと。
「日本は今行き詰まってると思うんです。風通しが悪くて若者もインターネットの世界で自己完結しちゃっています。もっと自分を主張して、おれはこういうことがやりたいんだ、ということをもっと違ったかたちで発表すれば、もっといいことができると思うんです。もう少し能動的に自らアクションを起こすこと。自分たちで面白いと思ったものに関して、自分が納得できるまで突き詰めるっていうことが必要だと思います。自分の人生は好奇心をもって自分で決めることです」
—TDF参加者へのメッセージ。
「いつの間にか57歳になりましたが、まだまだ若い人を信じたいし、人間を知りたいです。今の若い人は覇気がないとか、政治に関心がないって言われてますが、その根幹にある探究心や好奇心が足りないのかもしれません。好奇心はやっぱりもたないといけないと思います。そうしないと悪い大人にはなれません。つまんない大人になっちゃいますよ。立派な大人にはなれるかもしれないけど、僕にしてみれば立派な大人ほどあてにならないものはないですね。おれがかっこいいなと思う大人はみんな変なんです。でも、変だけどやっていることには意味があって、深い。音楽を通してそういう大人がいるんだってことを伝えていきたいです」
音楽評論家、DJ、イベントプロデューサー
51年東京生まれ。立教大卒。71年大学在学時から音楽評論家としてキャリアをスタート、当時無名のQUEENを日本にいち早く紹介したり、SEX PISTOLS,THE CLASHなどのロンドン・パンクを現地取材するなど、時代の節目節目でのキーを握る。雑誌「an an」でのエディターなどを経てNHK FM「若いこだま」でラジオDJ活動も開始。79年、日本初のUK専門チャート番組となるラジオ日本「全英TOP20」を、さらに同局の「サウンドプロセッサー」、JFN「ロックディメンション」、TVK「ミュートマ・ワールド」などを経て現在JFN12局OA中「ロンナイ」で選曲、構成、パーソナリティーの三役をこなす。主な専門分野は60~90年代のイギリスのロック。 www.kenrocks.net